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心理学(交流分析)の活用によるコミュニケーション力の向上方法
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心理学(交流分析)の活用によるコミュニケーション力の向上方法

 ビジネスで高まるコミュニケーション力向上の重要性と科学的アプローチ

ITテクノロジーの進展にともない、あらゆるビジネスのスピードが劇的に早まるなか、組織内での情報、知識、成功体験、目的、目標、価値観などの共有により、事業推進を円滑に行うことがますます重要になってきています。

そこで、これらを共有し、メンバーが同一の認識のもとに組織として協働していくのに決定的に重要になってくるのがコミュニケーション力と言えます。しかしながら、現実的にはこれらのことが思い通りに上手くいっている企業はそれほど多くはありません。情報、知識、成功体験、目的、目標、価値観の分断がどこかで起こっており、最悪の場合には組織の機能不全にいたるケースも起こります。

こうなる前のプロセスを遡ると些細なコミュニケーションのミスマッチが原因となっていることも少なからず見受けられます。このコミュニケーションの課題には冷静に対応していきませんと、感情的なやり取りが深みにはまり泥沼化してしまう可能性もあります。

そこで、組織だってコミュニケーション力を高めるためには、感情に流されないようコミュニケーションを認知科学的に捉えるアプローチが効果的です。この点、心理学を活用すれば自身と他者を冷静に見つめ、認識を変えることで、コミュニケーションを改善、強化していくことができるのです。

 心理学(交流分析)活用によるコミュニケーション改善

1960年代以降の心理学では、統合失調症などの人の病的な状態を改善する方法が、健常者の生活をもより良くし、ひいてはビジネスにおいても使えるのではないかという認識が広まってきました。

その中で、もっとも歴史のある手法の一つが、「交流分析(Transactional Analysis)」と言えます。そもそもコミュニケーションというものは、私たちの人格が一人一人違うので、n対nの無数のコミュニケーションが発生し捉えどころのないものと感じられます。

しかしながら、交流分析では、二者間のやりとりを分析し、パターン化することで、何をどう変えたらコミュニケーションはどう変えることができるかという因果関係を明らかにし、改善可能なものとして、コミュニケーションを捉えることに成功しています。

 交流分析のビジネスでの活用

交流分析の創始者エリック・バーン博士は、人格を形成する自我状態には構造があると言います。構造は大きく3つに分かれ、自身や他者に内在する様々な自我状態は、親、大人、子どもの3つからなると指摘しています。

交流分析では、これらの3つの自我がどの程度でてくるのか、それぞれを自我のエネルギー状態として捉えられるとします。それでは3つの自我状態とはどのようなものでしょうか?

一番目の、親の自我状態とは、ある決め事を徹底して守ろうとしたり、喜んで人の世話をしたりする態度に表れています。しかし、これが行き過ぎると、ガンコ親父のように頑迷になったり、うるさい母親のように過干渉になったりします。

二番目に、大人の自我状態とは、冷静で合理的、目的達成のためには臨機応変にやり方を変えていくことも辞さないという態度に表れています。しかし、行き過ぎると、冷たくて打算的になったりします。

三番目に、子どもの自我状態とは、想像力豊かで天真爛漫、あるいは他者に対して従順といった態度に表れています。こちらも行き過ぎると自由でわがままな子どものように傍若無人に振舞ったり、あるいは従順な子どものように過剰に適応して、自身が精神的に追い詰められたりするといったことがあります。

交流分析では、人は誰でも、この3つの自我状態のバランスで成り立っており、親の影響や、子どものころの体験から形成されてきた、固有の自我状態を持っていると言います。つまり、人間は過去からの影響を受け現在の自我を作り上げているのですが、それぞれにビジネス上のコミュニケーションにプラスになる特性とマイナスになる特性を持っているというわけです。

しかしながら、3つのうち大人の自我状態は、過去が現れている自身の自我状態の現状を分析しつつ、親の自我状態や、子どもの自我状態を上手くコントロールしながら適切なコミュニケーションを模索していくことができるという特長をもっています。つまり大人の自我状態を上手く活用、拡張することで、未来に向かってコミュニケーション力を高めていくことができるのです。

 交流分析のコミュニケーションへの活用

実際のコミュニケーションにおいては、様々な自我状態からなる自身と相手がやり取りをすることになります。

それぞれが大人の自我状態では、組織の目標に向かって、情報や知識を共有し、協働したほうが、より効率的、効果的に物事が進んでいくとわかっているわけですが、この大人の自我状態が他をコントロールできていないと、どうしても非合理的な面、不条理な面が出てしまいます。

例えば、コンセンサスを取らずに一方的にものごとを進めてしまったり、えこひいきしたり、知らず知らずのうちにマウントをとったり、不要な忖度をしたり、また気づかれないように情報操作したりといったことが起こったりします。そこまでいかないにしても、積極的に協力しないなどの対応が出たりするのです。

しかも、それらを無意識にやってしまっているために、自身は気づいていないことも多いので、コミュニケーションの歪がいつまでたっても改善しないということがあります。

双方感情的になり、子どもの自我が前面に出てきた場合は、傍から見ていると、まさに子どもの喧嘩のような状態になることもあります。このようにならないためには、大人の自我状態を常に保持しておくことが大切です。

コミュニケーションの状態を自分で分析し、主体的にコントロールし、対話を円滑に行うために、重要なことは何かというと、自身の自我状態を知るとともに、相手の状態も知り、どのようなコミュニケーションが取り得るのかについての理解です。

そのためにはまず、なぜ自分はこのような自我状態の特徴をもっているのか、また、その背景にある、自身の人格特性とはどのようなものを理解する必要があります。

 人格特性を測定するにはエゴグラムから

自身の人格特性を知るには自我状態を測定するツール「エゴグラム」を活用します。エゴグラムは、バーン博士の弟子であるジョン.M.デュセイ博士が、自我状態を分かりやすくグラフ化し視覚的、定量的に把握できるようにしたものです。

これにより親、大人、子どもの表れ方がどの程度なのかを知り、これによって自分の人格特性がどのようなものなのかを定量的に理解できます。

さらに、人格を形づくる基とも言える自我の構造を理解することを通して、相手の自我の構造をも知ることができるのようになるのです。自身と他者をともに理解することで、なぜ自分は、なぜ相手は、このような言い方、このような行動をとるのかが理解できるようになります。

つまり、二者間でのコミュニケーションの歪が起こる可能性を事前に知ることができ、その前により良い関係が築けるよう対策を講ずることができます。

さらに、定量的な数値を見ながら、自分の意志によって、大人の自我状態を強化し、自身のプラス面をさらに大きく、マイナスを小さくすることで、自分の在り方を変えていけるのが、エゴグラムのツールとしての使い勝手の良さと言えます。

 エゴグラムの測定例と活用方法

エゴグラムでは、自我状態の親を父心、母心に2分し、大人はそのまま、子どもは、自由心と従順心に2分して、5つの自我状態として捉え、簡単な質問に答えることで、自我の輪郭が明らかになります。一例を示しますと、以下は冷静沈着なタイプを示しています。

このタイプの特徴:冷静沈着で根拠をもって行動する。高い判断力で完璧に仕事をしようとする。規則やルールを優先させる面があり、ときに周囲の意見が入ってこないときがある。デュセイ博士は、エゴグラムの数が、人の数だけ存在すると指摘していますが、240パターン以上に分ける分類法や、20パターン程度で説明する分類法もあります。(日本ITイノベーション協会では、コミュニケーションの改善や人材育成等、企業組織の運営に適応させるため90パターンで運用しています。)

このタイプはコミュニケーション上どう表れるかというと、弁がたって思考力が高いのですが、何事も論理的な厳密さを求め、威圧的になりやすく、部下が本心で相談できないといったことが起こります。特に、従順心の高い部下であれば、「わかりました。」といったん指示に従いはすれども、心から納得しているわけではないので、モチベーションは低く成果は上がらないといったことが起こります。

そこで、例えば同タイプの人は、エゴグラムで自身のタイプを自覚し、従順心の高い部下に対しては、自分のペースで一方的に話を進めるのではなく、相手がどう受け止めているか、どう感じているかを確認しながら進めて行くコミュニケーションのやり方を学んでいく必要があります。

 エゴグラム測定の後のコミュニケーション力の向上が重要

さて、本来エゴグラムは交流分析の中の いち ツールなのですが、分かりやすいため、世の中ではこれが独り歩きしている状況があります。エゴグラムで自我状態を測定して、「なるほど、なるほど自分はこんな人格特性なのか、確かにそうだね」と納得してそれで終わってしまうということです。

しかし、組織としてコミュニケーションを改善し、コミュニケーション能力をしっかり高めていきたい場合は、交流分析全体の枠組みをもっと理解する必要があります。

エゴグラムをきっかけにして、交流分析を活用し、長期のやりとりを通してコミュニケーションを改善していく手法ついては、世界各国で研究が進み、精神疾患の患者の治療だけでなく、医療従事者と患者のコミュニケーション、医療組織内のコミュニケーションを円滑化するなど幅広く導入されてきています。

歴史がある分野だけに、成果を共有し新しい研究につなげる専門の学会もあり、専門資格も運営され、メソッドはかなり確立されています。ただ日常的に企業が使いこなし、コミュニケーション力の改善や、人材育成を行うには、一般の管理者が部下指導に活用できるよう企業独自に使い勝手の良い方法を模索する必要があるでしょう。

 
NPO法人 JITAは、多様な主体が参画するプラットフォーム型のNPOとして、
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