DX担当になった時、DX開始時の進め方のポイント
あらゆる企業に共通の組織の課題
人事制度の設計・再構築のポイント
1 人事の軸を決める
2 あるべき人材像明確化の重要性
3 あるべき人材像の探求と能力定義の方法
4 あるべき人材の能力階層化の方法
心理学(交流分析)の活用によるコミュニケーション力の向上方法
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人事制度の設計・再構築のポイント4~あるべき人材の能力階層化の方法

 あるべき人材が持つ能力を階層化する意義

前稿、
人事制度の設計・再構築のポイント3~あるべき人材像の探求と能力定義の方法
をもとに、最後に能力の階層化を行います。

これはつまり、あるべき人材の完成形、最上位の能力に到達するために、どのようなステップがあるのかを可視化することになります。

なぜそうするのかというと、能力の階層化は、次のステップアップのための獲得能力の目標ともなります。すなわち人材育成に使えるようになるということです。また、人事評価にも活用でき、処遇にも反映できるようになります。

また、あるべき人材の育成に向けて、全社的にベクトルが向かいますと、求心力が生れエンゲージメントも高まるからです。

ここで、一旦、最終的に落とし込む人事制度をイメージするため、典型的なパターンである、ジョブ型と職能型について考えてみましょう。

ジョブ型制度の功罪

近年、ジョブ型制度が日本でも脚光を浴びており、今後も導入が増えてくると思われます。必要な仕事に対して、人を当てはめていくという仕組みは、評価のしやすさや、業務が明確になることで若手社員にとってモチベーションにつながりやすいなど利点は多いですが、反面、テクニカルなスキルだけをもってスキルアップするという事態が起こり、その結果転職しやすさも助長してしまいます。最悪、優秀な人材ほど辞めていくということにもなりかねません。

そこで、どのような人事制度であろうが、わが社固有のあるべき人材としての能力を高めようという意識を持ち続ける仕組みをつくる必要があるのです。よって、人事システムの最重要部分はわが社ならではの人材育成の仕組みをどのように組み込んであるかにかかっていると言えるでしょう。

職能資格制度の課題

人材育成の仕組みが組み込みやすいのは、ジョブ型よりも昔からある職能資格制度になります。

ところが最近、職能資格制度の運用が難しいので、ジョブ型に移行したいという話がよくあります。能力の定義があいまいなので、評価者によって恣意的な評価が入ってしまう。これによって、被評価者の納得感が形成できず、評価に不満を持つようになるというものです。

そこで、相対評価や360度評価で対応しようという試みもあります。しかしながら、これでも課題は解決しないので、ジョブ型が魅力的に見えてくるわけなのです。

しかしながら、職能資格制度のより本質的な課題は、能力定義が厳密ではないということによるものです。能力定義が厳密であって、階層化がしっかりできていて、能力要件が達成できているかできていないかの判定基準が明確であれば、評価に対する納得感は得られるはずなのです。

 能力階層化の取り組み例

まず、何もないところからの制度設計であれば、職能資格制度を中心として、5~7段階で、あるべき人材のスキルを階層化します。これらを能力給として評価していくのです。ジョブの評価は、自身の仕事における期初目標の達成度で業績給として評価するといった制度設計が可能となります。

また、既存職能資格制度への組み込みであれば、現在制度の5~7階層等の階層段階ごとに、あるべき人材としての能力項目を追加します。一方、ジョブ型であれば、あるべき人材としての能力評価をジョブの中のバリュー評価として組み込むことも可能となります。

 あるべき人材能力の定義と能力の階層化がもたらす7つの効用

最後に、あるべき人材の能力定義と階層化は、ソフトな人事システムの肝となります。人事の軸が人間の脊椎のようなものであるとすると、その中を通っている神経経路の脊髄のようなもので、組織全体への波及効果は極めて大きなものと言えるでしょう。

その効用としては次のような8つのものが挙げられます。

1.理念と実践の結合

いかに立派な経営理念を掲げていても、従業員自身が理念を体現するものであると認識していないと、自分の問題にならず、絵にかいた餅、額縁の飾り、営業やIR資料の口上に留まる可能性があります。

理念の体現によって、自身の人材としての評価が高まるという認識があれば、確実に、能力の階層レベルを上げ、あるべき人材になろうという動機が発生します。このため、理念と実践がつながることになります。

2.わが社固有の人材育成システムとして教育を機能させることができる

各人が能力の階層を上げようと努力する根拠ができることによって、一つ上の階層に上がることが成長目標となりえます。また、階層化されていることによって、階層ごとに絞り込まれた教育プログラム化が明確になり、自前で作るオリジナルなプログラム設計や、研修対象者の選定、外部から調達してくる研修プログラムの優劣の判定もしやすくなります。

また、あるべき人材の定義、能力の明確化や、階層化によって、部下指導の組織的標準化が可能となり、属人的な人材育成に陥ることなく、人材にバラツキが出来ることを防げます。

3.評価、処遇がやりやすくなる。

能力定義が階層化され、明確であることによって、評価の判断が正確になり、評価の納得性を高めることができます。また、評価による処遇への不満も防ぎやすくなります。

4.採用がやりやすくなる。

あるべき人材像と能力の評価方法が明確になっていることによって、新規採用対象者に向けたメッセージが作りやすくなり、応募者のミスマッチを少なくすることができます。

5.人的資本の価値を高めることができ、かつ可視化できる。つまり人的資本価値の指標となる。

わが社の理念をハイレベルに実践できる人材が増えれば増えるほど人的資本の価値があがっていることは間違いありませんが、階層化していることによって、人的資本価値の定量的表現が可能になります。つまり、例えばレベル5、6、7の割合をそれぞれいつまでに何%にするとかです。これをIR資料上で、表現すれば人的資本経営に真剣に取り組んでいる会社として表明ができます。

6.会社へのエンゲージメントを高めることができる。

わが社固有のあるべき人材の定義によるあるべきスキルを向上させようという意識が働いているとき、社内で人材価値にかかわる共通言語が語られ、知らない間に一体感が生まれるようになります。

7.企業文化の醸成に役立つ

人材が成長した結果、成果も拡大し、その成功体験を共有することで、理念と実践の結合度を深めることができます。また、成功体験と成長のフィードバックを繰り返し、繰り返し継続することで、企業にとって良い文化が醸成できるようになります。

8.サステナブルな業績向上

1~7によって、人的資本力が増すことにより業績の達成能力が高まり、企業の体質が本質的に強化されます。これにより強い組織基盤のもとにサステナブルな経営が実現できるようになります。

以上、人事制度の設計・再構築のポイント1~4で述べてきましたように、あるべき人材とその能力定義を核として、人事の軸を構成すれば、時代の変化に耐えうる人事制度の構築が可能となります。

このとき、「戦略は細部に宿る」という言葉がありますが、評価が可能なレベルでの能力の階層化が、地道ながらも隠れた重要なポイントになり、これが人事制度をコントロールしていく強力なエンジンになり得るのです。

 
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