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自立人材育成のために、教育しておくべき基本中の基本
1 会社の仕組みと自身の関わり
2 顧客にとっての価値を考える
3 仕事の深い意味に気づかせる
4 自ら問いを立てる習慣をつくる
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自立人材育成のために、教育しておくべき基本中の基本3~仕事の深い意味に気づかせる

 自立人材育成という企業共通の悩み

最近、若手社員を中心に、自立人材をどのように育成していくのかが多くの企業の共通の悩みとなってきています。今までと経営環境がガラリと変わり、過去の教育の成功体験がそのまま人材育成に使えなくなってきました。これほどまでに世の中の変化が激しく、不確実で、複雑な経営環境の中では、もはや正解というものがなくなってきたからです。

そこで、人材育成にかかわる私たちはゼロベースから教育内容を見直していく必要があります。最低限インプットしておかなければならない、教育コンテンツにおける必要要素とはどのようなものでしょうか?

これまで、自立人材育成のために、教育しておくべき基本中の基本1~会社の仕組みと自身の関わりおよび自立人材育成のために、教育しておくべき基本中の基本2~顧客にとっての価値を考えるについて取り上げてきました。

今回は、働き手としての自立人材を考えてみましょう。利益を生み出し、顧客に価値を提供する仕事に従事している若手社員が、目先の困難にもめげず、やる気をもって仕事に取り組む自立人材であるためには、会社での仕事へのエンゲージメントが重要であると言われています。

しかしながら、国際的な調査機関ギャラップ社による数年前のエンゲージメント・サーベイによると、調査対象国百数十か国のうち、日本はエンゲージメント最低位に位置付けられています。この調査がもとになり日本の働き手はエンゲージメントが低いという一般的な問題認識が作られてきました。

 働き手のエンゲージメント問題~会社で仕事をする意味

今まで、日本の雇用慣行では、良くも悪くも就職ではなく就社といわれた、メンバーシップ型が中心となっていました。メンバーシップ型では、いったん会社に就職してしまうと、様々な部署を経験しながら、徐々にマネジメントスキルや専門スキルを身に着け、役職を上げ、給料も上げていくというものです。また、日本においては、労働者が安心安全に働けるように会社は個人の福利厚生機能も担ってきました。つまり、会社が人の人生ごと丸抱えして、面倒を見るのが普通なこととして受け入れられてきたのです。

このような仕組みを支えるのが職能資格制度でした。しかしながら、年功序列という傾向や、評価が不透明であることも多いため、職能資格制度こそが若手の意欲、エンゲージメントを阻害しているという見方があります。長く会社にいればいる人ほど、実際の仕事内容と成果がどうであれ等級が上がっていき、昇給もしていくのは公正ではないということです。

職能資格制度の仕組みでは問題があるとの観点から、近年、ジョブ型が注目されています。ジョブディスクリプションで業務内容とそれにふさわしい給料が明確になれば、働き手が自発的にステップアップをもとめて、仕事に邁進するようになるだろうという見立てです。

確かに、ジョブ型制度を導入すれば自発的なキャリアアップに努力する人材は、増えるかもしれません。しかし、長期的に自立人材に活躍してほしい、わが会社の立場から見るとそれで問題解決するかというとそうでもなく、別の問題が出てきます。つまり、若手社員が、ジョブの定義と賃金の大体の関係を知ってくるにつれ、他社のジョブと待遇にも興味を持つようになり、自身のステップアップのための転職も喚起されるということです。

個人主義的な価値観の浸透と、経済発展の原則からすると、より成長性の高い産業に人材が移動していくのは世の中の必然かもしれません。しかし、肝心のわが社としては優秀な人材に抜けられてはたまりません。そこで、職能制度、ジョブ型制度の議論以前に必要なのは、わが社において仕事をすることの強い動機です。つまり、わが社において仕事をすることの意味付けこそが、もっともエンゲージメント向上に不可欠な施策になるといえるでしょう。

 会社での仕事の意味を考えるよりどころ、顧客を中心とするステークホルダーへの価値提供

会社での仕事の意味付けとは、自分にとって、この会社に所属して取り組む仕事はどのような価値があるのかを理解するということです。このときに、わが社に在籍して仕事をすることの中心的な意味は、自立人材育成のために、教育しておくべき基本中の基本2~顧客にとっての価値を考える(リンク)でも触れた、どのような価値創造活動にかかわっているかになります。そこで、会社としては、相対している目の前のお客様やその他のステークホルダーだけでなく、この活動が社会的にいかに有意義なものであるかを伝える働きかけが重要となります。

伝えるべきは、会社がお客様や、その他のステークホルダー(取引先、金融機関、投資家、地域社会、地球環境等)に対して提供している価値創造活動がどのような意味を持っているのか。広く言えば、社会全体にとって会社がどのような重要な役割を担い価値を提供しているかです。

このような会社の価値創造活動は、会社が一つの大きな仕組みや、プロジェクトとして動いているからこそ、1人では成し得ない大きな価値が創出できることを意味しています。個々の社員を中心に考えたとき、会社の仕組み全体が、自身の仕事を生み出す元になる自身の資産であるとも言えます。先人から引継ぎ蓄積されてきた会社の資産の厚みと、自身にとっての活用の仕方を知ったとき、この会社にいる深い意味がだんだんと見えてきます。

こういったことは、会社の創業から歴史をひもとき、社会に対してどのような貢献をしてきたのかを、若手社員にしっかり伝えていく必要があります。

 経済的な恩恵だけではない、自身の成長の場としての会社

さらに、顧客を中心とするステークホルダーに対して価値創造をしていく集団である会社に属していると言うことは、多様な他者の期待に応えるため、他者との中長期的に良好かつ継続的な関係を作っていける力を養う場とえいます。

中長期的に良好かつ継続的とは、一言でいえば自利と利他のバランスが取れているということです。一方的に、どちらかが負担を強いられているような、関係ではやがて破たんが訪れます。そこで自利と利他のバランスがとれている共存共栄の関係でなければならないということです。

口で言うのは簡単ですが、ステークホルダーには、それぞれの都合もあり、ステークホルダーが多岐にわたる大きな組織になればなるほど利害関係の調整が困難になります。

ところがこれを乗り越えていく営みこそが、より大きな価値創造につながり、社員にとってはもっとも良い成長の機会となります。なぜなら、本当の共存共栄はステークホルダーのより本質的な問題を発見し、問題解決に役立ったときのみ実現できるからです。

このような共存共栄関係を築くにあたっては、単なるビジネススキルの向上だけでなく、経営についての深い理解や、人格を鍛えることも必要となり、この体験ができることこそが会社に所属している価値と言えます。つまり、単に仕事が生活の手段だけでなく、広く人間を成長させてくれる代えがたい機会ということになります。

ただし、多様な他者とのやり取りを通しての息の長い営みは一定以上の長期間、組織に在籍し、じっくり腰を落ち着けて、成功体験を積んでいかないと理解できないし、共存共栄の関係をつくる共創力として体得もできないという性質を持ちます。

そこで、会社に所属している価値は、時間をかけてステークホルダーとの間での価値創造の成功体験とともに理解していくものであることを、会社はしっかり社員に啓発していく必要があります。

 仕事の意味を考えるベースとなる理念教育

わが社における仕事の意義を伝えようとするとき、腹落ちする理解を助ける支柱になるものが会社の、経営理念体系(MVVや経営理念、経営方針、行動指針等々)になります。突き詰めると、仕事に取り組む意義は経営理念体系の中に記述されているはずです。(記述されていなければ、新たに言語化する必要があります。)

経営理念が正しければ、文字通り、経営理念が実現されるように企業活動に参画することで、この会社で仕事をする意味が見えてくるということになります。

会社としては、固有の「仕事の哲学」ともいえる経営理念をひも解き、仕事によって創造する価値や、仕事によって自身が成長するという意味を、若手社員に繰り返し語っていく必要があります。

もし、このプロセスがなければ、会社に所属して仕事をしている意味について考える機会が、少なくなり、社員は啓発されず会社は単に、経済的な収入を得るための手段に陥る可能性があります。逆に、わが社で働く、仕事の意義を伝えきる努力をし、自尊心や使命感を持たせることができれば、社員はより前向きに仕事にコミットするようになるでしょう。

したがって、この会社で仕事をすることの、繰り返しの強い意味付けこそが、自立人材が起動し、活躍するための、もっとも重要なよりどころとなるといえます。

 

次に、4つ目のコンテンツは、自立人材が身に着けるべき最も基本的なスキルの獲得方法を明らかにしていくものです。

自立人材育成のために、教育しておくべき基本中の基本4~自ら問いを立てる習慣をつくる

 
NPO法人 JITAは、多様な主体が参画するプラットフォーム型のNPOとして、
個と組織が協働、共創、革新を遂げる自立人材育成のイノベーションに取り組んでいます。
 
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